久留米版徒然草 Vol.33
命長ければ恥多し
直木賞作家安部龍太郎さんは郷土(黒木町)の大先輩。その安部さんがつぶやいている。
健康で長生きしたいとは誰しも願うことだが、不老長寿の仙薬などないのだから静かに死を受け容れる以外に術はない。「住み果てぬ世に醜き姿を持ち得て何かはせん。命長ければ恥多し。長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ。」南北朝の動乱期を生きた吉田兼好は『徒然草』の中でそう記している。40前に死んだほうがカッコ良いと書いた吉田兼好だが人生そうはうまくいかなかった。70歳近くまで長生きしてしまった上に、生活に困って恋文の代筆までしたと『太平記』は伝えている。
引用されているのは徒然草の第七段。「あだし野の露消ゆる時なく鳥辺山の煙立ち去らでのみ住み果つる習ひならば、いかにもののあはれもなからむ。世は定めなきこそいみじけれ。」なる書き出しの有名な段である。法律の代言を生業としている私はカッコ良くないことが多い。40歳なんぞ遙か以前に通り過ぎてしまった。70歳は遠くない。どこでピリオドを打つか迷い中。