サービス業者と潔癖性
弁護士の5者的要素には偏りがあります。判りやすいのは芸者と学者です。
芸者的要素が強いのは事務所を繁栄させるため筋の悪い事件も抵抗無く受ける弁護士。こういう弁護士は田舎よりも都会に多い。都会では弁護士間の信頼関係が無いこと・裁判所に対する印象を考える必要がないこと・事務所維持のコストが高いこと等が指摘されます。瀬木比呂志「民事訴訟実務と制度の焦点」(判例タイムズ)549頁以下に東京の特殊性が詳細に描かれています。 今後弁護士人口が増大し事務所維持のため乱暴な活動を行っていく弁護士が増えていくならば、この国の司法の将来は暗いと言わなければなりません。更に危惧されるのはロースクールや司法修習の自己負担化により多額の借金を背負ったまま弁護士になる者が増加したことです。借金返済を背負った弁護士は受任すべきではない事件を受けてしまう可能性が高い。弁護士事務所の敷居が高すぎるという批判がマスコミで報じられますが敷居が低すぎる弁護士も問題なのです。
学者的要素が強いのは論理を重視するあまり依頼者の不合理な要素に付き合いきれない弁護士です。弁護士は根が真面目な方が多く、いわゆる建前論に弱い。裕福な家庭で育ち幼いときから優秀な成績であったため依頼者の不合理な要素に付き合いきれない方も少なくない。このタイプの中には「仕事が合わない」と言って弁護士業務をやめて行く方や精神を病む方もいます。瀬木比呂志氏は「法律家の精神衛生についての1考察」という特異な論文を専門誌に掲載されています(判例タイムズ999号)。弁護士業は難儀な商売です。映画やドラマで描かれている弁護士の活動は実務とかけ離れています。ヴァラエティーに出演する弁護士も増えましたが、同業者から見ると「そう」状態の方としか考えられません。実際は「うつ」に悩んでいる弁護士が多いのではないでしょうか。