易者知と学者知の調和
池内了氏は「疑似科学」をこう分類します(「疑似科学入門」岩波新書)。
第1種疑似科学 難問を解決したい・未来がどうなるか知りたい、そんな人間の心理につけ込み、科学的根拠のない言説によって人に暗示を与えるもの。
第2種疑似科学 科学を援用・乱用・悪用し科学的装いをして実体がないもの。
(a) 科学的に確立した法則に反しているにもかかわらず正しい主張であるかのように見せかけている言説。永久機関やゲーム脳など。
(b) 科学的根拠が不明なのに根拠があるかのような言説でビジネスの種になっているもの。マイナスイオン・健康食品・アドレナリン・クラスター水など。
(c) 確率や統計を巧みに利用してある意見が正しいと思わせる言説。
第3種疑似科学 複雑系ゆえに科学的に証明しづらい問題について真の原因の所在を曖昧にする言説。疑似科学と真正科学のグレーゾーンに属する。
疑似科学が蔓延るのが何故か?池内氏は次の要因をあげます(90頁)。
1 科学と科学者への失望(科学の影の部分への反発)
2 全てお任せの態度(市民の無責任さ・当事者意識の希薄性)
3 現代の「神話」(原子力の安全神話・教育の荒廃神話・民営化神話等)
4 科学への偏愛(「疑う」という方法意識の欠如)
5 ポストモダニスム(徹底した相対主義・真理の否定)
先端科学の真偽など一般市民には判るはずがありません。科学が解決し得ない問題は「科学に幻想を抱く人」ほど非合理に走る傾向があるようです。しかし法律実務で「科学を無視する怪しげな思考」が蔓延るのは困ります。弁護士に必要なのは両者の適切な使い分けでしょう。