5者のコラム 「学者」Vol.35

雑用をこなすこと

水月昭道「アカデミア・サバイバル」(中公新書ラクレ)はこう述べています。

最近の院生にはいわゆる下働きをなるべく回避しようとする人が多くなった、という先生方のぼやきをここ数年よく聞くようになった。「それは私の仕事ではありません」「アルバイト料は出るのでしょうか」。自分の先生から雑用に近いことを頼まれた場合、こんなふうに答えを返す院生はもはや珍しくない。それだけでなく、しばしば「それは搾取じゃないですか」とか「パワハラですよ、先生」などと、より辛辣な形での返答すら普通になってきたという。教員たちはしばしば困惑しプライドを傷つけられながら、それまでは学生がやる仕事と相場が決まっていた”資料作成・お茶くみ・コピー・掃除・誤字脱字を中心とした論文校正作業・文献検索やその入手・データの分析”等を泣く泣く自分でやらざるを得なくなっている。

鳥飼重和氏は「『稼げる』弁護士になる方法」(すばる舎)でこう述べています。

残念なことに中には「俺は弁護士だ」「弁護士業務に関係ない仕事はおまえがやれ」といったふうに偉ぶっている者もいます。でも考えてみてください。私たちの仕事はいろいろな人の支えがあってはじめて成り立っているのです。弁護士が偉いと思ったら大間違いです。自分から率先して何でも手伝う。そうすることで、そんな当たり前のことに気づくはずです。

どの世界でも新人が任されるのは雑用です。最初から自分の地位や能力を過信して、それに相応しい業務が与えられるのを待つだけなら、そんな人に先輩は誰も声をかけてくれないでしょう。先輩から信頼を得てゆく最も早い道は雑用なのです。弁護士会の運営も年々難しくなっていると聞きます。以前のようにただ働きしてくれる人材がいなくなってきたという話を聞きますし、手弁当で委員会活動を頑張ってくれる若手が入らないため組織が高齢化しているところもあるようです。若手には中長期的視野に立って「雑用」もこなしていただきたいと願います。

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