5者のコラム 「学者」Vol.69

統治制度とコスト・自由と独立

内田樹教授は「政治とコスト」についてこう述べています。

だが政治について考えるときに、あまり金のことばかり考えない方がいいと思う。というのは「費用対効果の高い政治」を徹底的につきつめると、意外なことに最適解はたぶん「アメリカの51番目の州になる」というあたりに落ち着くしかないからである。(略)国会で「アメリカの州になります」と議決すればいいのである。ハワイもテキサスもそうやって州になった。そうなれば中国との尖閣問題でも・北方領土問題も・円高問題も・TPPも、もう日本人は自主的には何も考えなくてよくなる。全ての懸案は日本人の肩から取り払われる。全部ホワイトハウスが私たちに代わって処理してくれるのである。沖縄における「外国軍隊の不法占拠」状態も一気に解決する(だってアメリカ軍は自国軍隊になるのである。彼らが基地外で市民に対して犯した犯罪は日本州警察が所轄し、オスプレイだってもちろん自国民の上に飛ばしたりはしない)。日本州代表で2人の上院議員と5人ほどの下院議員を連邦議会に差し出して衆参両院は廃止。700人いる国会議員を上下院で50人の「日本州議員」に格下げ。都道府県は「市町村」に、「市町村」は「郡・大字・字」にそれぞれ格下げ。費用対効果ということを最優先すればこれが本当に最適解なのである。

自由と独立は「自分の頭で考える」苦悩と「その価値を維持する」コストを払って初めて守られます。将来「費用対効果」を叫ぶ亡国的政治家の扇動により日本が「自由と独立」をドブに捨てるときが来れば日本人は自分たちが大切な何かを失ってしまったことに後になって気づくことになるでしょう。同様に、過剰な「費用対効果」意識にもとづく司法改革の行き過ぎによって日本が司法修習制度をドブに捨てさり司法制度が崩壊を見せ始めたら、そのときに、日本人はかつて司法が保持していた「大切な何か」を失ってしまったことに後になって気づくことになるのでしょうか。

芸者

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