5者のコラム 「易者」Vol.73

有利なこと・不利なこと

鈴木敦史「占いの力」(洋泉社新書y)の記述。

「見たい」という感情は今日の自分の運勢がどうなるのかを知りたいという欲求だ。というより人は誰しも自分の情報に敏感なのである。それも多くの情報が、大河の如く押し寄せるマスメディアで、自分について語られれば、思わず耳をそばだててしまうに違いない。(略)「見たくない」という感情はその占いでもたらされた結果が悪いのではないかということである。(略)悪い情報を仕入れなければ問題は起こらないということだって出来るかもしれない。だから占いは良い結果だけ信じるという人もいる。都合の良いものばかり信じるということは現世利益を求める傾向に通じる。実際そうしている人は多いのではないか。結果が良ければポジティブに受け入れ、悪ければ多少気にはしつつも見ないフリをする。

法律相談において弁護士は相談者に有利なことも不利なことも話します。相談者の反応は様々です。冷静に話を受け入れる人もいますが、不合理な反応をする人もいます。その典型が「自分にとって有利な話だけ受容し自分にとって不利な話は全く聴いていない人」です。自分に有利な情報には異常に敏感なのに、自分に不利な情報は存在しないものであるかのように扱う。こういう相談者が世の中には確実に存在します。日常生活においては、かような態度だってアリかもしれません。しかし法的判断の場面は日常生活の場面と違います。自分にとって不利な情報も冷静に・客観的に向き合うことの出来る人でないと、後になって思わぬ事態に狼狽することになりかねません。弁護士には有利不利を問わず事実関係を全て話して欲しいし、弁護士から受けたアドバイスは有利・不利を問わず、全部を冷静に聞いて理解して欲しいのです。

役者

前の記事

人生の舞台の変遷
芸者

次の記事

すり減ってしまう自分