■2021年04月09日(Fri) 梅林寺の座禅体験
* 本稿は2011年1月15日にアップしていたものですが、写真を取り直し記述内容も見直してリニューアルいたしました。
 梅林寺(江南山梅林禅寺)は久留米藩主の菩提寺であり、臨済宗妙心寺派の修行道場としても著名です。梅林寺は観光を拒絶してきたので、これまで観光雑誌などに取り上げられることがありませんでした。この孤高の存在・梅林寺が「久留米ほとめきまち旅博覧会」のために門戸を開いてくださることになり、私は2年連続で「梅林寺の本格座禅体験」に参加することが出来ました。この<座禅体験>の報告です。梅林寺はJR久留米駅から北に歩いて5分ほどの距離にあります。眼前に新幹線の高架があり、駅前の高層マンションも間近に見えます。こんなに近いのに、山門をくぐれば世間から隔絶された世界が広がっています。
 

 本堂前にソテツが植栽されています。根元の円盤碑には篠山町渡邊家にあったソテツが明治13年(1876)に移植されたこと・当時で樹齢200年余りであったことなどが記されています。このソテツは樹齢300年を超す古木なのです。


 境内には多くの松の木が植えられており、地面の白砂が美しく手入れされています。私たち参加者は入り口で受付をした後、広間に通されました。



 広間には多くの禅画が掛けられています。私には達磨を描いた正面の禅画が最も印象的なものでした。菅虎雄(夏目漱石の親友)の書も掛けられています。(12年11月16日「夏目漱石と久留米1」を参照して下さい。)


 広間で老師から簡単なお話を伺った後、直ぐ座禅堂へ向かいます。雲水(修行僧)から足の組み方・姿勢の正し方・呼吸の仕方などを教えていただきます。私を含めて初心者ばかりなので、雲水も厳しいことは言わず、まずは座ることに慣れるよう見守られています。座るときには目を閉じません。背筋を伸ばし、薄目で数メートル先を見つめる感じです。 たしかに如来像をよく見ると、目を閉じているのではなく薄目をあけて少し先を見つめているようです。言われてみて初めて気づいたのですが、如来様も座禅をしておられたのですね。


 比較的早めに昼食となります。食堂はありませんので、廊下に飯台が並べてあるだけです。ここで雲水と同じ食事をいただきます。三黙道として「食事・便所・浴場では喋らない」との決まりが告げられます。ご飯(麦飯)・汁物・漬物は手をこすって自分の適量を雲水に伝えます。こすらないと雲水はどんどんご飯を注ぎますから大変です。食べ残すことが許される雰囲気ではないからです。配膳が終わると飯台の上に生飯(さば)を施します。これは自分が食事をする前にご飯を数粒とって鬼界の者に与える行為です。自分だけではなく目に見えない他の世界のものにも気遣う作法として伝えられているものです。ご飯は後述する現役の竈で炊かれたものです。食事が終わると生飯は集められます。食器も自分で洗いますが、器の中に少しの湯が注がれるだけです。これを3つの器に流し込んで自分の指で洗うのです。

 食事の後、本堂で皆で声をそろえて数種類の経を唱えます。「般若心経」や「四弘請願文」などです。それから老師の講話を拝聴します。老師が強調されるのは「まず姿勢を整える・次に呼吸を整える・最後に心を整える」ということです。心を整える方法として老師は数息観(すうそくかん)を指示されます。複式呼吸をしながら「ひとーつー・ふたーつー・みーっつー」と数えるのです。若い頃から腹式呼吸で鍛えられているからか、老師の声には独特の張りがあり、とても良く響きます。雲水を含め梅林寺の方々は質素な食事しかしていないのに立派な体格をされています。梅林寺の方々をみていると栄養学に対する疑問がわいてきます。規律正しい生活をして穀物と野菜だけの粗食をする方がはるかに体に良いのではと考えてしまいます。(五木寛之「百寺巡礼第10巻」講談社43頁に同じ疑問が書かれています。)

 老師講話の後、2回目の座禅をします。皆座る姿勢がさまになってきました。雲水から警策で背中をたたいてもらうことも出来ます。希望する者は雲水が前を通る際に合掌をします。大きな音がしますが、それほど痛みは感じません。叩き方にもコツがあるのでしょう。この頃になると足がだんだん辛くなってくるので雲水から経行(きんひん)をするよう指示されます。一列に並んで座禅堂の周囲を歩き回るのです。これは座禅によって悪化する下肢の血流を良くするために行われるもののようです。それから作務をします。2班に分かれ1つの班は本堂の雑巾がけをしていました。私どもの班は本堂前の通路の落ち葉を箒で集める掃除を仰せつかりました。銀杏の葉っぱを箒で集めて綺麗にしました。本堂前の唐門には見事な彫刻があります。その門前を自分の作業で美しくするのは誇らしい気持ちがしました。




 作務を終え3度目の座禅をした後に寺内の見学。本堂と位牌堂を御案内いただきました。石庭は美しく手入れが為されています。本堂入口のところに置かれている竜の絵がとても印象的でした。本尊の如意輪観音は拝見出来ませんでしたが、位牌堂の薬師如来と大日如来を拝むことが出来ました。

          
 最後に典座寮(台所)を見せていただきます。二升釜、一途釜、さらに一石の飯が炊ける竈まであります。全て薪で炊かれるものです。高い天井はススで真っ黒けです。五木寛之氏も竈と五右衛門風呂について驚きと感嘆の声を連ねておられます(前褐44頁)。井戸も現役で使用されています。


 梅林寺は久留米藩有馬家の菩提寺であり、裏手に立派な有馬家墓所があります。


 梅林寺外苑は早春に梅の花見客で賑わいます。「梅林寺」という名称は藩祖(有馬則頼)の院号(梅林院殿)から採られたものであり、この地に最初から梅林があったわけではありません。「梅林寺なのに梅林が無いのは寂しい」という市民の声を察した石橋正二郎氏により(会社名義で)昭和33年に寄付されました。広さは約3000坪で1000本を超える梅の木が植栽されています。




 梅林寺は全国でも有数の修行道場です。その梅林寺を私が単に「情報」として発信するのは良いことなのかという気がします。やはり梅林寺は観光するお寺ではありません。短時間であっても座禅をするための修行道場です。この記事を見て座禅に興味を持たれた方がおられましたら次回の「久留米ほとめきまち旅博覧会」で「梅林寺の本格座禅体験」に参加してみてください。

* 梅林寺外苑(筑後川寄り)に「菅虎雄先生顕彰会」の手になる夏目漱石・菅虎雄の友情を記念する碑が設置されています。外苑を訪れる方は是非とも意識して観てください(2012年11月16日「夏目漱石と久留米1」参照)。