■2021年07月14日(Wed) 不在者財産管理人の選任申立
 財産管理事件は裁判所の関与下で他人の財産全体を静的に管理する業務であり「不在者財産管理人」と「相続財産管理人」が主な類型です。不在者は「従来の住所又は居所を去って容易に帰来する見込みのない者」を言います(民法25条1項)。
 次の文書は隣地所有名義人が不在者となっていた事案において、当方が原告として移転登記手続請求訴訟を提起する際の被告になってもらうため家庭裁判所から不在者財産管理人を選任して貰った際のものです。

(土地に関する時効取得)
 別紙目録記載の土地は不在者*名義である。この土地の隣地である*町大字*番は申立人の祖父*の所有であった。両方の土地にかかる形で建物が存在している(*町大字番地・家屋番号*番)。建物は*名義である。*は昭和*年*月*日に死亡し*が両土地と建物の自主占有を開始した。*は平成*年*月*日死亡した。以後、申立人が占有を承継し、現在に至るまで固定資産税の納付及び土地建物の管理を行ってきた。よって申立人は本件土地を時効取得している。
(不在者財産管理人選任申立の経緯)
 不在者は(戸籍事項証明書による限り)戸籍上は存命されている(少なくとも死亡した事実は確認できない)。その実子である3名はアメリカ合衆国*州*市(郡)にて出生しているが、アメリカの居住地等の公的情報が残っていない(少なくとも当方では入手できない)。申立人は、不在者を被告として時効取得を原因とする所有権移転登記手続請求訴訟を準備しているが、日本国内の最後の住所地を戸籍の附票上で確認できない。他方、アメリカ合衆国は州によって住民登録制度が異なり公的書類上で住所を調べることが困難である。仮に不在者が既に死亡していた場合でも死亡時の住所が判らないことから死亡証明書等を取得することができない。ゆえにその配偶者及び実子らの生死や住所等についても調査のしようがない状況である。
 よって不在者財産管理人を選任していただきたく本件申立をした次第である。

* このように相続人の中に海外に出た方がいる場合に弁護士は難儀します。海外の方に手紙を出すこともあります(2010年5月28日「相続人の調査」参照)。
* 本件は家庭裁判所から不在者財産管理人を選任していただき、この管理人を被告として管轄地方裁判所に時効取得を原因とする移転登記手続請求訴訟を提起し、認容判決を得て、無事に所有権移転登記を完了することが出来ました。
* 死亡の事実が公的書類で明確になる場合には「不在者財産管理人」ではなく「相続財産管理人」の選任を管轄家庭裁判所に申し立てることになります。