■2017年12月13日(Wed) 自由財産の範囲拡張申立
 破産手続における管財人の職務は破産財団を占有・管理・換価した上で債権者に平等に分配することにあります。管財人が就任して直ぐ管理開始する財産を「現有財団」といい、これを法が定める規範的な姿(法定財団)に一致させるべく努めて「配当財団」を形成することが管財人の最も重要な仕事です。破産財団に属しない破産者の財産(自由財産・34条3項)は申立により拡張することが出来ます(自由財産拡張制度・同条4項)。裁判所は拡張するか否か判断するに際して管財人に意見を求めます。協議によって裁判所・管財人・申立人の意見が一致すれば良いのですが(多くの場合に一致します)一致しない場合は必ず意見書を提出しなければなりません。以下は私が管財人として提出した消極意見書の抜粋です。

1 結論
  本件申立はこれを認めるべきではない。
2 理由
  破産法第34条4項は自由財産範囲拡張に関する基準を次のとおり定めている。
  @ 破産者の生活の状況
  A 破産手続開始の時において破産者が有してた前項各号に掲げる財産の種類及び額
  B 破産者が収入を得る見込み
  C その他の事情
  本件においてこれをみるに
  @ *歳で、生活保護を受給しているというのは一応考慮すべき事情ともいえる。しかし、
   これを超えて拡張を相当とする事情の理由提示が無く、資料も提出されていない。
  A 有価証券に関する拡張には慎重でなければならないと一般に解されているところ、
   本件対象財産は*であり、有価証券としての性質が認められる。
  B 破産者は既に生活保護を受給しているというのであるから、その受給が継続されて
   いる限りは生活は出来るということである。
  C 申立人は「税金の滞納」を理由としているが、租税はもともと非免責債権であるから、
   本件破産手続中でこれを考慮する意義に乏しい。一般的な破産手続のマニュアルを
   参照しても「手続終了後に税金を支払う必要があること」を自由財産範囲拡張の理由
   付けに用いているものは見当たらないようである。
 C結語
   よって本件申立は認めないのが相当と思料する。
                                      
* 申立代理人(弁護士)が就いていれば破産法34条4項の要件事実と換価基準に照らした
 記載が為されるので、通常は自由財産拡張を認めること(積極意見)が多いと言えます。
* 上記意見書にもとづく破産裁判所の却下決定に関し破産申立代理人から高等裁判所に
 抗告申立がなされましたが、福岡高裁は原決定を維持しました(抗告棄却・確定)。
* 本件対象財産は申立人(本人)が既に受領していましたが、上記高裁決定をふまえ管財
 人である当職から申立人に対し返還請求をしたところ、速やかに返還がなされました。