■2017年07月21日(Fri) 電話会議方式による理事会の可否
 かつて医療法は医療法人の機関として社員総会と理事に関する規定しか置いていませんでした。しかし医療法人の透明性の確保とガバナンス強化のため、第7次医療法改正に於いて理事会に関する規定が新設されました。ゆえに医療法人を運営する者は理事会の適法な成立を意識していかなければなりませんが、医療法人の理事は多忙な方が多いので、電話・テレビ・Webを使った理事会を開催することが出来るか否か問題となります。この点を直接に議論する医療法上の見解は未だ一般的には見当たりません。しかし会社法において若干の議論の展開が見受けられますので、これを参考にして考察することにしてみましょう。

 医療法人の理事は理事会に出席する責務を負っていますが、ここでいう「出席」は物理的に理事会が開催されている場所に居なければならないことを意味するのでしょうか?一般法人法施行規則は物理的に同一場所での出席をする必要はなく、テレビ会議方式や電話会議方式による出席も可能としています(一般法人法施行規則15条3項1号括弧書を参照)。
 会社法においては電話会議による取締役会の適法性が問題になった事案があります(福岡地判平成23年8月9日)。この事案は「会議室の固定電話から遠隔地にいる取締役の携帯電話に電話をかけ、取締役会の間、ずっと接続しておく」方法が用いられていたようです。この固定電話はスピーカーフォン(スピーカーと集音マイクを内蔵した電話機・この機能を用いれば複数人が同時に電話を聞いて発言を行うことができる)の機能はなく、遠隔地にいる取締役に会議室の議論内容はほとんど聞こえず、同人の発言も受話器をとらなければ聞き取れないような状況にありました。福岡地裁は、このような状況の下では、遠隔地にいる取締役を含む各取締役の発言が即時に他のすべての取締役に伝わるような「即時性と双方向性の確保されたシステムを用いることにより遠隔地にいる取締役を含む各取締役が一堂に会するのと同等に自由な協議のできる状態」になっているとは言えないとして「当該遠隔地にいる取締役が取締役会に出席したと判断することはできない」と判示しました。
 医療法人のコンプライアンスを高めるために基本的に理事全員が同一場所に集まって会議体を構成したほうが望ましいことは言うまでもありません。ただ医療法人の理事には多忙な方が多く特に当該理事が海外にいる場合にまでこれを強制することには別の問題が生じます。ゆえに即時性・双方向性を確保できるテレビ会議(特殊端末を使用)やWeb会議(インターネット回線を使用)は活用の余地があると思われます。単なる電話会議の場合、情報量に圧倒的な差異がありますから、会議室間で会話が全員に「即時に」「双方向で」伝わる環境(最低でもスピーカーフォンの機能を備えること)が求められていると言って良いでしょう。

* 医療法上の議論が明確でない場合に蓄積が豊富な会社法上の議論を参考にすることは法律家の常套手段と言えます。(興味がある方は医療法人に於ける社員総会決議の瑕疵に関して議論した06年12月7日「決議の瑕疵と訴えの利益」を参照してください)。