■2020年07月16日(Thu) 貸金債権と消滅時効
 貸金請求訴訟でよく争点になるのが消滅時効の成否です。この点について原告側の若い弁護士さんが明確な誤解を示していたことがあったので被告側で要件事実の議論をしたことがあります。裁判官からも賛同いただきました。

1 請求原因
  貸金請求訴訟は請求原因として弁済期の定めが不可欠である。本件においては@昭和*年*月*日、A平成*年*月*日、B平成*年*月*日、C平成*年*月*日として各々が特定されている。これらにつき被告側は全て不知と認否している。
2 抗弁(消滅時効)
  原告が主張する貸金(@ないしC)は弁済期から5年(商法522条)又は10年(民法167条1項)の経過で時効消滅する。要件事実として求められるのは弁済期から5年又は10年が経過したことと消滅時効を援用する意思表示をしたことである。細かい事実の主張立証は全く不要である(答弁書はこの趣旨で記載した)。
3 再抗弁(時効中断事由の存在)
  時効中断事由は原告側に主張立証責任がある再抗弁事由である。その具体的な事実を主張立証できなければ原告の請求は棄却される。原告がいう中断事由は「債務の承認」である。これは消滅時効により利益を受ける者が消滅時効により権利を失う者に対し権利の存在を知っていることを意思表示したことである。これを具体的な事実(時間・状況・当事者・対象債権)を特定して主張立証しなければならない。債務の一部に関する弁済は必ずしも債務全部についての承認とならないというのが判例である(大判昭和16年2月28日)。ゆえに原告が主張する弁済がどの債権に対するものかが必要となるところ訴状においてはこの点が不明だったので釈明を求めたのが答弁書の要件事実的意味である。民法488条以下を適用すれば本件は@ABCの順番に充当されることになる。が、そうなると@Aは弁済によって消滅していることになる。他方BCは消滅時効によって消滅している可能性が高い。

* 具体的な事案における消滅時効の成否は事実関係で異なります。
* 本件事案は再抗弁事実が認められなかったので原告の請求は棄却されました。