■2018年10月10日(Wed) 学者 121
 プロ棋士と将棋ソフトの対戦「電脳戦」(2017)は、最強ソフトである「ポナンザ」が佐藤天彦名人を2連勝で破り幕を閉じました。先崎学九段はこう評しています。
 本局の結果は大方のプロの、そして若手棋士全員の、予想と同じものであった。超えたかという「ことばのあや」については電王戦終了という事実を持って皆様の想像力にゆだねたい。しばらくAIと人間の対決は将棋界ではないだろう。とりあえず総括してみると、人と人が闘う将棋は1対1のマラソンのデッドヒートのようなものだなと思った。理屈も理論もなし。相手に勝てばそれでよし。それが我々の生きてきた世界だ。対して電王戦。AIとの対局はお互い別々のところでタイムを計って答え合わせで勝ち負けを決めるようなものだろう。それはそれでいい勝負なら面白いといえよう。(略)棋士としては序盤の指し方に興味があった。コンピュータは多種多様な指手を用い将棋の序盤戦において、駒がぶつかるまでは、バランスさえ取れれば「なんでもあり」だということを教えてくれた。バランス重視にみえる人間のほうが実は片寄った偏見のあるモノの考え方をしているということを知らしめてくれた。(引用終)
 法律業界も職務にAI を導入することの是非が議論され始めています。民事法律業務は「当事者(事件)」→「法律家(弁護士・裁判官)」→ 「当事者(結果)」という流れの情報処理という側面を有しています。インプットの場面における当事者から情報処理サイクルへの入力作業が劇的に改善されるのなら(法律実務はこの点が最も複雑かつ困難)法律業務においてAI 導入が一気に進む可能性があります(アウトプットは比較的容易)。音声入力の正確性は劇的に改善しており裁判所とのやりとりも将来は電子化されるのかもしれません。そのときに弁護士はどうするのか?おそらく「理屈も理論もなし」では済まされないでしょう。「相手に勝てば良し」でも済まされないでしょう。私には「AI 時代の弁護士の姿」が未だ見えていません。